「犬」の折り工程プチ解説

『折紙探偵団』80号に掲載された「犬」の折り図をネタに書いた文です。同誌を持ってない人には意味不明だと思いますがあしからず。

2003/8/9公開

問題となる工程

 犬の折り工程は、紙の対角線方向に走る4本の折り筋をどうつけるかからまず考え始めました。折り図では工程8と10でつけている折り筋です。

 この折り筋は構造の中心的な位置を占め、その後の工程におけるガイドとしても機能します。これをなるべく正確に折り出せるような工程を考えます。

 その前に、「背骨に直交する対角線」には折り筋を付けないことを決めていました。完成形に出る折り筋が好ましくない位置に出てしまうからです。この縛りをかけた上で工程を探します。

最初の解答

 さて最初に試してみたのは次のような手順でした。

 中心線に近い方の線を見ると、図5での左右の三角のカドの先を通る線ですので、これは分かりやすいことこの上ないですね。しかし実際に折ってみると、基準となる点が一点しかないのでかなり折りにくいです。「背骨に直交する対角線」に折り筋がひいてあれば折りやすくなるのですが、それはできません。

 とは言え、この解決法は間単に見つかります。工程3で新たに出来る折り筋の交点があります。ここに図4で○印のあるカドを中心線越しに合わせて折ればいいのです。これは合わせる2箇所が離れている分、割りと正確に折れます。

 内側の線が折れれば、後は中心線までの距離と同じ幅を取って外側につければ目的の4本の折り筋がつく‥‥わけなのですが‥‥

選択した工程

 ‥‥ここまでの工程は採用出来ませんでした。なぜなら、このやり方では外側の折り筋をつける時に、内側の折り筋の誤差がさらに大きくなってしまうのでなかなか正確に折れないのです。実際に折ってみると、「背骨に直交する対角線」が無いせいもあり、左右でずれたりしてしまうことが分かります。特に大きいサイズの紙を使った場合に顕著です。

 そこで、この問題を回避するために、“先に外側の線をつけ、それを中心線に合わせて内側の線をつける”事にしました。これなら精度が高くなるはずです。

 では、どうやって外側の折り筋をつければいいでしょうか。簡単な基準はないものか探してみると、外側の線は図5での左右の折り返しのフチと、工程2でつけた折り筋の交点を通っていました。

 しかし、2つの交点は位置が近すぎて、2点を通り中心線に平行な線を正確に折るのはとても無理そうです。

 仕方ないので、いきなり折ることは諦めて間にワンステップ挟むことにしました。工程5、6がそれで、基準となる2点間の距離を離す事が目的です。

 これで、かなり精度の高い折りを実現出来るようになりましたが‥‥5、6からさらに一工夫して、工程7〜9のように処理したところが今回のポイントです。工程7を折ることによって、5〜6で生じうる誤差を強制的に修正することが可能になるわけですね。工程8で誤差が出ていないか確認しつつ折れるようになりました。めでたしめでたし。

 ‥‥とまあこんな具合に考えながら折り工程を組み立てているという一例でした。

図に起こすときの問題あれこれ

 折り工程の次の段階であるところの折り図表現についても少し。

 図にする時に悩んだのはやはり工程30ですね。これはもう半ばあきらめて「これで分かって欲しい」という感じで描きました。下手に立体図や写真を使っても分かりやすくなるか疑問でしたし。

 47〜51は、要は中割り折りを繰り返した形にすればいいのですが、特に意味なくこんなステップにしてみました。「かえってややこしい」とか言わないで下さい。

 後は一部で「なんだかよく分からない」との声もあった「次の図はこの方向から見る」記号をこっそりと変えてます。前のはラングさんの折り図から拝借したもので結構カッコよくデザインされてるなあと思っていたんですけどね。もうひとつ細かいことをいうと、すこーしだけネーム(図の解説文)の情報量をアップしようと試みてみたんですが、改めて見返すとそんなに変わってないかも‥‥、説明が足りてない箇所もまだまだありますね。

最後に訂正

 最後に、61・62の間にある裏返し記号は、62・63の間の間違いでした。どうもすみません。(締め切りぎりぎりまでレイアウトを直していた、というのは言い訳です。)