節足法について考えてみる

節足動物の体節構造を折り紙設計として再現する設計法




[923] 節足動物 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/22(Wed) 03:0

節足動物の体の構造とか調べてみる。

http://screammachine.tripod.co.jp/about.htm

[924] 節足動物 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/22(Wed) 03:12

ここは横から見た図有りhttp://puh.hp.infoseek.co.jp/mushimukashi.htm

[927] ショウジョウバエ 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/22(Wed) 03:36

[924]と比較すると面白い。
http://dept.biol.metro-u.ac.jp/fly/www/funny-fly.html#mutants

[928] 展開図上の帯領域と節足動物の体節との対応 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/22(Wed) 04:05

なんで、節足動物の図を見るかというと、展開図上の帯領域と節足動物の体の一節とを対応させれば折紙造形がとりやすいかもしれないから。

[942] 節足法について考えてみる(1) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/25(Sat) 17:44

節足法という折紙設計法を考えてみました。
これは節足動物を折るのに適している(と思う)設計方法です。
どういう方法かというと、節足動物(エビ、カニ、虫とかですね)の体は分解すると、一つ一つの体節に分解できて、それらの体節の基本構造はみな同じなので、そのことを折紙設計の段階で再現する方法です。具体的には、節足動物の体節は、折紙設計では帯状の横分子(帯領域のことです)としてあらわします。
また節足動物の一つの体節には、基本的に、こちらのリンク先ページhttp://screammachine.tripod.co.jp/about.htm の図のように2本の歩脚と2本の鰓脚があるそうです。(なお、このページのホームはhttp://screammachine.tripod.co.jp/index.html で、センスのよい絵や文章が楽しめます)
すなわち、節足動物の一つの体節には、基本的に4本の突起があるわけですから、折紙の展開図上では一体節をあらわす一本の帯領域に4この円領域(円領域分子法の場合)なり、正(長)方形領域(横分子蛇腹法の場合)なりを、埋め込めば、節足動物の体節に対応する構造が出来上がるわけです。(図は続きのカキコでアップします)

[943] 節足法について考えてみる(2)、一体節だけ設計してみる 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/25(Sat) 18:38

図です。

[944] 節足法について考えてみる(3) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/25(Sat) 19:41

複数の体節を連続させた構造を設計するにはこの図のように、展開図上で、適当に体節の帯領域を積み上げます。なお、ここの図は。歩脚と鰓脚の正方形領域は面倒なので省略していますが、実際には[943] の図の一番下のように体節に切れ目が入って、そこに正方形領域が詰め込まれた状態になっています。
なお、この図で帯領域を黄色とダイダイ色で色分けしたのは、単に見やすくするためだけで、それ以外の理由はありません。

[945] 節足法について考えてみる(4) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/25(Sat) 20:33

[944] までの節足動物の体の構造と、折紙設計のパーツの対応付けによって、基本的な節足動物(つまり、2本の歩脚と2本の鰓脚を持つ一体節が、連続してつながった生物)の構造は、そのまま折紙設計で再現できることがわかりました。

ここで、節足動物について調べてみると、昆虫とかムカデとかエビとかカニとか、ありとあらゆる節足動物の体の構造は、基本的な節足動物の構造を変形したものと考えられます。

ということは、それに対応して、折紙設計における、昆虫とかムカデとかエビとかカニとか、ありとあらゆる節足動物の展開図は、基本的な節足動物の展開図を変形することで得ることができるはずです。
これが、いま述べている節足法という折紙設計法の基本原理なわけです。

そして、例えばこのようにして昆虫を折るための展開図が得られたとしたなら、その昆虫折紙は基本的節足動物構造の変形という、実物の昆虫構造が必ず守っている、進化的、発生的なルールを、折紙設計の段階で満たすわけですから、造形的により自然な折り紙になることが期待できると思うわけです。
現時点ではあくまで思っているだけで、それが本当かどうかは今後の作例次第ですが。

[946] 節足法について考えてみる(5) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/25(Sat) 21:19

[945]までが、節足法のあらましなわけですが、ここまで読まれた方で、設計法に詳しい方は気づかれていると思いますが。節足法は特別な設計技法を用いるような方法ではありません。
節足法は、むしろ非常に素直な横分子の応用例で、節足動物の体節構造と帯領域をそのまま直に対応を取ったものです。

 なんでわざわざ節足法なんかを強調しているのかというと、これによって、折紙設計時の造形的目標が精密になるとかいう理由とかもあるもしれませんが、自分としては、ともかく面白そうと感じるからというのが理由の大部分です。節足法で「とんぼ」を折ったらどうなるだろうか、とかね。まあ、うまくいくとは限らないわけですが。

[947] 節足法について考えてみる(6) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/25(Sat) 22:57

節足法を実際にムカデやトンボに応用しようと思ったときに、次のような問題が発生します。 「本物のムカデやトンボはどういう風に各体節に分けられるの?
それがわからなきゃ帯領域の本数も決められないよ」と。

そこで、節足動物についてまた調べてみます。

ここのリンク先にはムカデっぽいのとかバッタっぽいのとかの体節を横から見た図があります。
http://puh.hp.infoseek.co.jp/mushimukashi.htm
(なおここのトップページは蝶の情報が充実した楽しいサイトみたいです。 http://puh.hp.infoseek.co.jp/mainmenu.htm )

この図はA.H. Knoll & S.B. Carroll, Science 284: 2129 - 2137 (1999)の図らしいですが、面白いです。
http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/LifeRh/04/Knoll_Caroll_Fig4b.jpg
昆虫は図の一番下みたい。
(なおこの図は後藤 健さんというかたのぺージにありました。このページ自体にも興味深い情報がたくさんあります。http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/)

ここに東城幸治さんという方の説明がありますが、 やはり体節を横から見た図があります。
http://nh.kanagawa-museum.jp/tobira/5-3/toujou.html
(ここのトップページは神奈川県立生命の星・地球博物館 で面白そうな所です。http://www.city.odawara.kanagawa.jp/museum/g.html)

[948] 節足法について考えてみる(7) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/25(Sat) 23:38

[947] の三箇所の図などを見比べると、ムカデと昆虫の体節の対応がわかっておもしろい。

ムカデに関しては鰓脚は退化しているので、結局は、各体節に歩脚が2本づつついてることになる。ここは以前みるかし姫さんに教えてもらったことがあって、まとめると、

オオムカデでは、触角のはえる頭部を除いて、胴節が21で脚が21対(曳航肢を含)。また、オオムカデでははじめの胴節ふたつが融合して、同じ節(頭節のすぐ後ろの第一胴節)から 牙と第一歩脚がともに生えることになる、とのこと。

ということは、あえてオオムカデの融合しているふたつの胴節を分けて考えれば

オオムカデ= 1 X 頭節(触角)
     + 1 X 胴節(牙、 後節と融合)
     + 1 X 胴節(歩脚、前節と融合)
     +19 X 胴節(歩脚)
     + 1 X 胴節(曳航肢)

となるもよう。

この展開図に関しては、去年の9月ごろ折ったムカデと実質的にはほとんど差がないでしょう。

[949] 節足法について考えてみる(8) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/26(Sun) 00:25

昆虫に節足法を適用してみます。それにはまず本物の昆虫を各体節に分解する必要があります。昆虫の体は分解すると頭部と胸部と腹部になりますが、この分類ではまだ不充分で、節足動物としての一体節にまで分解するには、頭部はさらに6節にわかれ、胸部はさらに3節にわかれ、腹部も融合等で数に変動はあるものの、10から11節くらいにわかれるらしい。
また腹部の節では歩脚も鰓脚も退化し、胸部では鰓脚が羽になるらしい。

[950] 節足法について考えてみる(9) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/26(Sun) 01:27

いろいろ調べてみるとこんな感じ。

[951] 節足法について考えてみる(10) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/26(Sun) 01:43

[950] の図まで体節を分解したら、あとは、この構造は横分子系の展開図に、比較的容易に写しとれる。

問題は頭部の構造について、まだはっきり書いてある資料が見つからないこと。それでイマイチ確証がもてない。
ただ、いろいろな図を見て想像するに多分下側の図のようになっているとはおもうが、、、

自分が折るとしたら、仮に事実と違うとしても下側の図を折りたいような気がする。

[952] 節足法について考えてみる(11) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/26(Sun) 17:31

とりあえず、昆虫頭部の設計をやってみる。

[953] 節足法について考えてみる(12) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/26(Sun) 21:30

とりあえす、昆虫の頭部を「節足法+横分子蛇腹法」で設計して、実際に折ってみます。展開図は次のカキコでアップします。

[954] 節足法について考えてみる(13) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/26(Sun) 21:30

展開図です。

[955] 節足法について考えてみる(14) 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/26(Sun) 22:01

実際に[954]の展開図を[950]下の図のタイプに折ってみました。
今、デジカメが手元にないので、写真をアップできないのですが、折りあがり形は自分としては十分満足いくものでした。[954]では各パーツの領域の大きさは適当にきめたのですが、それでも昆虫らしい顔ができるみたいです。

一応、折ってみて気づいたことを書いておきます。
(1)目の位置を顔の横側にもってくるために、目の領域はもっと大きく取ったほうがよさそう。
(2)目と目の間の用紙中央線上にある領域はかなり大きくとって顔の正面に回しこむと造形上よさそう。
(3)設計図にはなくとも、蛇腹からカドを引き出すなどのアレンジが簡単にできて、いろいろと変形できて楽しい。

いずれにせよ、昆虫頭部造形を折るのに節足法はとても強力かつ便利な方法といえそうです。

[956] [955]の写真 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/01/28(Tue) 02:14

写真です。

[988] 「体節法」について 投稿者:みるかし姫@ごぶさた 投稿日:2003/02/23(Sun) 09:15

長らくご無沙汰しているうちに、大変な「虫」ネタが展開されていたのですね。遅れた参入で申し訳ありませんが、すごいと思います。
以前、「折り紙蜘蛛の世界における進化と発生」を東京蜘蛛談話会で発表させていただいた報告↓をいたしましたが、
http://mirukashihime.cool.ne.jp/ori/hassei.htm
この「節足法のムシへの適用」は、その第二段研究発表につながりそうな、すばらしい発展です。ぜひ、この線で、作品群を紹介してください。

>昆虫頭部造形を折るのに節足法はとても強力かつ便利な方法といえそうです。

[956] 試作の「昆虫頭部」は、それだけで、実際昆虫の顔をルーペで見て、その「モノすごい形相」に驚いたことのある者ならうならざるを得ない迫力を持っていると思います。めぐろさんが紹介されたHP群にも触れられているとおり、昆虫やエビカニ類等の高等節足動物の顕著な特徴は、融合した体節に「ごちゃごちゃっ」と密集している複雑化した付属肢の群れ(要するに顔の複雑さetc)にありますから、スタイル全体の「らしさ」に加えて、細部の「形相」を表現するのに、節足動物本来の発生時の造形パターンである「体節制」を導入したのは、学問領域をクロスオーバーする非常に見識の高い作風であると(生物屋としては)賛辞を送りたいと思います。

ところで、「体節制」についてですが、Knoll&Caroll 1999
http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/LifeRh/04/Knoll_Caroll_Fig4b.jpg
の図で紹介されているのは、系統進化を類推したものでありましょう(特にこの論文は遺伝子発現の調節メカニズムに対応しますが)。
基本的には異なる分類群(たとえば昆虫とムカデ)間で、どの節とどの節が対応するのか(系統発生的に相同か)という議論なのです。実際には現在ある生物の「体節」区分を定義する(卵から発生する過程で、体節の分節化と付属肢等の成長が観察されるので、そのプロセスから体節数を判断するようです)のは、かならずしも容易に合意されるものではないようです。「頭部は何体節か」という核心的答えにめぐろさんが行き着けなかったのも、その辺の問題があるかもしれません。昆虫については、私は昔習ったかもしれませんが、忘れてしまいました。
クモについては、1987年に出た日本語のクモ学の基本文献(吉倉真「クモの生物学」)で発生について詳しく述べてあって、クモの頭部体節数については、学者によって諸説ある、とされています。

ただ、発生学では、体節を定義するのに、体腔(体内に生じる空隙)だとか、神経節の形成まで考慮にいれますが、さすがに私たちは、内臓まで折るわけではないので(爆)、外形だけを重視して、付属肢のない体節は無視してよい(融合したものとみなす)、ということでもいいかもしれません。あるいは、最終的に造形しやすければめぐろさんの試作のように、付属肢のない体節も数えたモデルもよいでしょう。

分類群の対応でいいますと、先のKnoll&Caroll 1999図は、上から
・カギムシ(有爪)類
・鋏角類(クモガタ綱やカブトガニ綱を含む)
・多足類(ムカデ綱やヤスデ綱を含む)
・甲殻類ミジンコ亜綱
・甲殻類軟甲綱(エビカニを含む)
・昆虫類
という順です。これでわかるように、背中側から見ると「頭胸部」でひとつに融合している(背甲という構造です)クモも、体節としては頭部+胸部は7体節になるのです(付属肢は、鋏角=牙、蝕肢、4対の歩脚の6対)。
実際にクモの「顔」を体節法折りによって作ろうとすると、融合している背甲側をどうアレンジするか、そもそも身体全体が細長くて短い脚(肢)がついているという容姿ではないムシに、この体節法をうまく取り込めるか、という課題もあるでしょうが。ちなみに、「融合した背側」すなわち、折り線・沈め折りの現れない「つるっとした背面」という課題は、以前のS太郎
さんのクモ作品群でも、わたしの出した希望にこたえて実現してくれた作品例がありましたね。
背側の融合では、カブトガニなど、一枚の甲羅ですから、体節折りとの両立はもっと困難なのかもしれませんね。

さて、以前ムカデをおつくりになったときに、牙&口の構造について少し話題になりましたが、それを解決するのがこの節足法です。ですから、

>あえてオオムカデの融合しているふたつの胴節を分けて考えれば
>オオムカデ= 1 X 頭節(触角)
>     + 1 X 胴節(牙、 後節と融合)
>     + 1 X 胴節(歩脚、前節と融合)
>     +19 X 胴節(歩脚)
>     + 1 X 胴節(曳航肢)

ではなく、昆虫同様に、ムカデも異様な「顔」をしていることをあらわすには、背板側では融合している「頭部」の体節をもっとこまかく発生的に見て、<たとえばKnoll&Caroll 1999のモデルに従うなら、《触角・大顎・小顎》の三つの付属肢を伴う6体節(ないし最低3体節)に分けるほうが、フェアでしょう。それに加えて、毒牙に転じた脚の節(第一胴節)が続くことになります。

色々言いましたが、まずは「体節法折りで、ムシの顔を折る」ことの醍醐味をぜひ作品にしてください。『単純から複雑への構造を、単純なプロセス(折り曲げ)の反復作業で実現するというシステムとして、折り紙は生物発生の過程に非常に近似的である』という命題が、いよいよ説得力を持ってきました。

トンボに着目されたのもよいと思います。「トンボの卵の教材としての利用(発生教材)」というページ
http://www3.justnet.ne.jp/~t_aoki/ontogeny/eggdvlop.htm
で、

「卵内では付属肢が多数観察できるが,昆虫はこの付属肢から肢以外の様々の外部器官が生じる.例えば,触角,下顎,産卵管などである.特にトンボは下顎が大きく発達しているので,孵化後前幼虫から1齢幼虫が脱皮するときに,下にのびている付属肢が大きく反転して上方へ折りたたまれていき,下顎になる様子を見せると,昆虫の系統が多足類が進化したものであるという定説が実感できる.」

とありますが、こうした胚発生の実際を、折り紙でトンボの顎を折るときに追体験できるというのはすごいところまで生き物折り紙が来てるな、と感動です。

[990] みるかし姫さん 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/02/23(Sun) 19:5

節足動物の専門の方のコメントは大変参考になります。
何かお気付きの点などございましたら、ぜひまた教えてくださいませ。

この節足法は、去年、横分子蛇腹法でムカデを折ったときに、イメージがはっきりして、先日それを多足類以外の節足動物にも拡張してみたものです。(哺乳動物も初期発生過程に注目すれば節足動物と共通点が多いので、哺乳動物にも強引に適用できそうとも思うのですが、それはおいといて、、、)。

この方法は、みるかし姫さんの御指摘のとおり、節足動物系の顔の"うあああ"さを出すのにかなり適している感じがします。

一般的には、昆虫等の顔を折るには、設計の段階では大きなカドを一個だけ割り当てて、それをクイクイ変形させて造形をしていくという方法がメインで、もちろん、この方法はこの方法で合理的で有効な方法には違いないのですが、これだと、昆虫顔の「ごちゃごちゃっ」感はなかなか出しにくいと感じていました。
 そこで昆虫顔の「ごちゃごちゃっ」感を出すために、最初から顔の細部も設計で決めてしまおうと思ってました。ところが、従来、動物の顔まで設計で決めてしまうというのは、折紙技術としては可能でも、変なバランスの漫画チックな外見になってしまい、イマイチうまくいかなくて困っていたのですが、節足法だとなぜかうまくいくみたいです。
もしかしたら基本的な体節構造って言うのを人は無意識に認知していて、それが人の感じる昆虫らしさにつながっているのかも知れませんね。だから折紙でも体節構造さえとれば、どんな折り方をしても結構虫らしく見えてしまうのかも、、、。

[991] クモ折紙 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/02/23(Sun) 21:20

体節制の図を見てクモを折ろうとしても、私のような屋内型ナチュラリスト(なんじゃそりゃ!)では実際のクモの構造が頭に入っていないので、かなりつらいのですが、みるかし姫さんの説明のおかげで、なんとなく方向性はつかめたような気がします。
7体節6対付属肢なのですね。身体全体が短くて長い脚がついている容姿の生物でも、多分節足法は適用できると期待しています(これは、最近、急速に蛇腹系の折紙技法が総合的に急速に発展しているという事情を考慮した上での希望的予測ですが、、、。ある意味で節足法というのが出てきたのも蛇腹系技術の恩恵あってこそかもしれません)。

クモの場合(クモ以外でもそうですが)、眼がどの体節についているかが気になったのですがいまだによく分かりません。どう解釈すればよいのでしょう。

次回クモを折るときは、節足法で、脚の位置の改良と眼、牙、蝕肢を追加したいと考えています。

[992] クモの体節構造について 投稿者:みるかし姫 投稿日:2003/02/23(Sun) 22:32

めぐろさん、

>眼がどの体節についているかが気になったのですがいまだによく分かりません。どう解釈すればよいのでしょう。
>次回クモを折るときは、節足法で、脚の位置の改良と眼、牙、蝕肢を追加したいと考えています

http://mirukashihime.cool.ne.jp/taisetu.htm
↑クモの体節構造について、解剖学的な図をいくつかコピーしておきましたので、参考にしてください。

眼は、頭胸部全体を背側で覆っている背甲の前縁にくることになりますが(体節区分としては一番先端の、Knoll&Caroll 1999図でいうところの「Oc」節だと思います)、いずれにしても小さな単眼が8つなので、折り紙では眼は作らないほうがリアルです。一般のおもちゃやアクセサリ等で、「くもらしさ」を無くしてしまう原因の多くは、大きすぎる眼を二つつけることにあります。ただしハエトリグモは例外で、前方正面に大きな二つの形態視が可能な眼をもっています。

節足法を使うなら、頭部付属肢として、鋏角、触肢、そして触肢の根元にできた特異構造である顎葉(顎)を折り紙上は追加された付属肢として折り出すのがいいかもしれません。胸部付属肢は、歩脚4対。背側は頭部+胸部が一体となる背甲ひとかたまりになる必要があります。 そして、腹部付属肢として、「糸いぼ」二対ないし三対が、クモらしさのまたひとつのアレンジということになりましょう。腹部背面は、キムラグモなら体節化をそのまま使えますし、それ以外のクモでも種類に応じて「葉状班」の模様を体節構造を利用して織り出すというのが、ナマナマしいクモ種のアレンジに使えるかもしれませんね。

どの種がモデルとしてよいか、というあたりは、ちょいと図鑑とにらめっこして、探してみましょう。「顔」も拡大写真さがしておきます。
また、昆虫については、海野「昆虫顔面大博覧会」あたりが資料として有用かもしれませんね。<眼の位置等
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9974846501

[993] ムカデなど 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/02/23(Sun) 23:05

>昆虫同様に、ムカデも異様な「顔」をしていることをあらわすには、背板側では融合している「頭部」の体節をもっとこまかく発生的に見て、たとえばKnoll&Caroll 1999のモデルに従うなら、《触角・大顎・小顎》の三つの付属肢を伴う6体節(ないし最低3体節)に分けるほうが、フェアでしょう。
>それに加えて、毒牙に転じた脚の節(第一胴節)が続くことになります。

ありがとうございます。非常に参考になります。
ムカデの大顎、小顎は、ちょっとイメージがないのですが勉強してみます。

>『単純から複雑への構造を、単純なプロセス(折り曲げ)の反復作業で実現するというシステムとして、折り紙は生物発生の過程に非常に近似的である』

確かにそういう感じはしますね。そして、人間はそういうシステムの発生時の特徴を無意識のうちに認識できるのではないか、とも個人的に思ったりします。

生物種の系統的な特徴は、生物個体の発生過程の特徴とかぶっている。
生物個体の発生過程は、発生時の遺伝子の発現制御システムの制御下にある。
発生時の遺伝子の発現制御システムは、有機化合物の3次元空間分布に影響される。
有機化合物の3次元空間分布は、しばしば単純な連立微分方程式の解として求められる。

なんてことを考えると、人間が動物とかに感じる"らしさ"というものは結局大元の連立方程式の解の影響を、動物個体の形状から認識することかな、なんて思ったりもします。そしてそのつぼさえ押さえれば、後は適当に折っても、なんかそれらしく見えてくるかもなんて、、、(ああ、私、引っ張りすぎですね。いけない、いけない)。

>「昆虫の系統が多足類が進化したものであるという定説が実感できる.」
確かにこれは昆虫の頭部の節足法折りで感じました。

[994] ムカデのツラ 投稿者:みるかし姫 投稿日:2003/02/23(Sun) 23:17

↓超拡大の電子顕微鏡写真、リアルです。苦手な方、ご注意(笑)
http://www6.plala.or.jp/shiro-ou/photo01/mukakou.jpg

[995] クモの体節構造 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/02/23(Sun) 23:29

おお、なんてすばらしいページでしょう。
少し以前に、まさにそのページの内容が知りたくて、みるかし姫さんのページをはじめ、あちこちあたってみたのですが、情報がなくて困っておりました。大変ありがとうございます。

それにしても、やはり実物のクモの迫力は格別ですね。

ただただ感動です。

[997] クモのからだ 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/02/24(Mon) 00:44

>いずれにしても小さな単眼が8つなので

うーん、確かにきびしいものがありますね。でも単眼が8つというのもそれはそれで魅力的かも。

顎葉、背甲ひとかたまり、糸いぼは是非折って見たいです。

的確なアドバイスいつもありがとうございます。私はクモの専門知識がないので大変助かります。

モデルのクモは、クモ専門の人が見てクモらしいクモがいましたら、地味なクモであっても、教えていただければありがたいです。

いろいろよろしくお願いいたします。

[998] 昆虫とクモ類の体節の相同性 投稿者:みるかし姫 投稿日:2003/02/24(Mon) 18:41

東京クモゼミの過去記録から、見つけ出しました。

☆ 千田高史,1999.クモとダニの頭の起源について.どこから頭なのかが問題になっていたクモについて,遺伝子(ホメオボックス)の観点から,クモとダニの頭の起源が判明した.次の2論文が重要であった.
Damen,W.G.M.,Hausdorf,M.,Seyfarth,E.A. & D.Tautz. 1998. Expression of homeobox genes shows chelicerae arthropods retain their deutocerebral segment. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10665-10670.
そして,Telford,M.J., & R.H.Thomas. 1998. A conserved mode of head segmentation in arthropods revealed by the expression pattern of Hox genes in a spider. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10671-10675.
 昆虫とクモの相同の遺伝子を比較すると,例えば
(昆虫の)第1触角は(クモの)鋏角,
第2触角〔昆虫では欠如〕はクモの触肢,
Mandible〔大顎〕はleg1,
Maxillae〔下顎〕はleg2,
Labium〔下唇〕はleg3,
thorax〔胸部〕1はleg4,
thorax2はopisthosoma〔後体部=クモの腹部〕1
と相同であった.

というようにありました。

つまりぶっちゃけていうと、より原始的なクモは、昆虫よりも頭が「寸詰まり」ってことなんですね。

時間の余裕ができたときに、Knoll&Caroll 1999とあわせて該当論文を読んで、付属肢・付属器官の体節との対応の詳細を確認しておきましょう。

節足折りとしては、同じ体節数の基本展開図から、何番目の体節を何の形に折るかによって、ムカデになったり、昆虫になったり、クモになったり、というようなモデルが作れると、本当に発生学の「実感型」教材に使えると思います。
遊びとしては、眼の位置から脚の生えたショウジョウバエなんてのも作れるし(笑)。

[1000] 昆虫とクモ類の体節の相同性2 投稿者:みるかし姫 投稿日:2003/02/24(Mon) 21:24

該当2論文、案外簡単にネット上で全文見れました。図だけコピーしておきました↓
http://mirukashihime.cool.ne.jp/pnas.htm

体節の発現遺伝子の相同性から、鋏角類は、〔昆虫+甲殻類+多足類〕の姉妹群であるという結論も示唆されており、これは、現在水陸ともに地球を席巻している昆虫や甲殻類の進化の大元は、じつに「クモの仲間であった」ということであります。化石動物までたどると、クモの仲間である鋏角類やその周辺には、すでに絶滅したいろんな変な形相の連中がいたことがだんだん分かってきており、それらを折り紙で復元するというのも、ムシ折り紙屋「系統進化派」には、非常にチャレンジングな課題となりそうです。

たとえばこんなやつとか。↓
http://www.abdn.ac.uk/rhynie/trig3.htm
(クモ類の祖先かもしれないDr.Jason Dunlopによる化石生物trigonotarbidの復元模型) 体節だらけ(笑)で、そそられますよね。>めぐろさん

[1001] 発生学と折り紙 投稿者:みるかし姫 投稿日:2003/02/25(Tue) 10:20

>発生時の遺伝子の発現制御システムは、有機化合物の3次元空間分布に影響される。
>有機化合物の3次元空間分布は、しばしば単純な連立微分方程式の解として求められる。
>なんてことを考えると、人間が動物とかに感じる"らしさ"というものは結局
>大元の連立方程式の解の影響を、動物個体の形状から認識することかな

このへんの議論、ひっぱっちゃうと大変なことになりそうですが(笑)、むかしガクセイ時代に「構造主義生物学」が流行っていた世代の私には、ちょっと面白いので。

折り紙は単純な平面を「折る」ことで複雑な構造に至るので、その点、分子配列を「折る」たんぱく質の立体構造の決定とその点で似ていることは異論ないでしょう。ただ、理論的に求めた構造安定の「解」は複数あっても、生物が発生するうえで必要とするたんぱく質構造はそのうちの特定のモノなはず。いわゆる分子配列だけできまらない、より高次のデザインの制御という問題がありますよね。発生における「体節化」というのはまさにその高次構造が制御されている仕組みなわけですよね。

節足動物の発生と折り紙を対照したときに面白いと思うのは、

1)折紙分子の中に見られる「じゃばら折り」「沈め折り」等の折り方そのものが、平面から複雑構造を生む手法として、発生における卵割や陥入との対照ができる。部分形成におけるプロセスの類似という第一レベル

のほかに、

2)設計/デザインの類似性。すなわち、紙全体にどう完成体の部品を割り当てるか、と、胚の予定域→体節化による付属器官の発生の対照に見られる、高次構造における構造決定プロセスの類似というレベル

があることではないでしょうか。そして、われわれの脳は、この高次レベルの類似性を「らしさ」として認識しているのではないだろうか、とばくぜんと思いました。

[1002] ムカデのアップ 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/02/26(Wed) 00:59

うーん、ムカデのアップはやっぱり、くるものがありますねえ。
でも、今あらためて見てみると、なんかサンクタカリスとかと似てるんじゃないかなんて気になりました。
やっぱり、類縁なんだなあと、細かいところはよく分かりませんが妙に納得しました。

[1003] みるかし姫さん 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/02/26(Wed) 11:45

おお、またまた、昆虫とクモ類の体節のドンピシャの資料です。さすがに、門外漢の私とは、知識量と深さがぜんぜん違いますね。
大変助かります。ありがとうございます。
私ではせっかくの資料を見てもなかなか理解できないので、かみ砕いて説明していただけて、大変ありがたいです。

クモと昆虫の体節は顎と脚といった形態の違いはあっても、本質的には同じなわけですね。 うーん、なんか感動的です。
私は鋏角類は他の節足動物群とはかけ離れていると思っていたのですが、そうではないわけですか。興味深いです。

こういう話を教えてもらうと、やっぱり昆虫の顎とかは、目立たなくともちゃんと折ってみたくなります。
そうすれば、昆虫の展開図とクモの展開図の構造とで対応関係が取れるので、展開図に基づいた折紙分類と、実際の生物の形態上の分類が、けっこう一致したりしてくるかも知れませんね。
そしたら、折紙分類も楽になっていいなあ、なんて期待したりします。

また後ほど。

[1011] みるかし姫さん 投稿者:めぐろ 投稿日:2003/03/13(Thu) 00:59

遅レス申し訳ございません。trigonotarbidですかー。確かにそそられますね。
背部の体節の感じからして、まずは蛇腹から入るんでしょうかね。口の感じもなかなかそそられます。

ところで、体節法でクモ試してみたのですが、頭から足までは何とかなりそうな感じです。 糸イボは大変そうです。
そのうち、試作品をアップいたしたいと思っております。


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