ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(PART 1)

設計法「横分子蛇腹法」の提案と導入的解説




[651] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(1) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/06(Fri) 22:59

ジャバラ系折線構成は創作上きわめて有効で、すでに数々の優れた作品も発表されています(例えば、川村氏の動物群[編注:参考URL]や、田中氏のザリガニ[参考URL]や、タト氏のクワガタ[参考URL]等)。
この折線系統の作品の創作を、できるだけ容易に実行するために、誰でも使える簡単な創作システムを作ってみました。
この方法は、横分子や帯領域の概念とジャバラ法を組み合わせているために、これから横分子ジャバラ法と呼びます(領域円分子法などとはかなり使い勝手がちがう設計方法です)。
この方法を実行するには、簡単な操作をするだけでよいので、実際のところは横分子や帯領域についての予備知識は全く必要ありません。
帯領域ジャバラ法の簡単な内容をここに何回かに分けてアップしますので、興味のある方はお読みください。

[652] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(2) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/06(Fri) 23:23

-----用紙の準備-----

一般的には適当な大きさの不切正方形用紙1枚を用います。
ジャバラ系ですので、実際に設計にとりかかる前に用紙の縦横に等間隔の分割線を適宜引いておきましょう。この図は縦横8分割ずつですが、16分割や26分割など適当で良いです。なお、縦横の分割幅は同じにしておきます。

[653] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(3) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/06(Fri) 23:58

-----折りたいものの構造の捉え方-----

この点は円領域分子法と同じで、基本枝構造が利用できます。ただし、ジャバラ系なので基本枝構造の各枝長の比が整数比になります(例えば1:2とか 1:4 とかね)。

[654] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(4) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 00:35

-----展開図上に各カドを折り出すための領域の確保-----

円領域分子法ではカドの長さを半径とする円(=カドの長さの2倍を直径とする円)を用いて横分子、すなわち各カドを折り出すための領域を表現しますが、帯領域ジャバラ法では基本的に各カドに対応する横分子はカドの長さの2倍を一辺とする正方形で表します。帯領域は曲がるときは左右どちらかの方向に90度の角度で曲がります。

[655] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(5) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 01:06

-----設計された展開図が折りたたみ可能であることを保証する原理-----

円領域分子法では、設計された円図から縦分子を発生させ、縦分子の一値性によって折りたたみ可能性が確保されます。
しかし、帯領域ジャバラ法では全く異なった様式で折りたたみ可能性が確保されます。
具体的には先に作った正方形領域や帯領域などの各横分子の境界線が一値性を持つことと、さらに、その境界線がジャバラ系であるため、決まった高さでギザギザ上下することによって折りたたみ可能性が確保されます。
このことは言葉で書くとひょっとしたらわかりにくいかも知れませんが、実際は非常に単純なことなので、興味のある方は是非[654]の図を実際に折ってみて赤線(これは横分子の境界線を表す) のところをハサミで切ってその断面図を見てください。(なお、[654]の図中の黄色い部分は適当に処理するか、後から出てくる訂正版を参照して下さい)

[656] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(6) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 01:21

-----「一値ジャバラ性」の定義-----

[655]で書いたように「分子の境界線が、一値性を持ち、かつ、一定の高さでギザギザと上下する性質は折紙設計上非常に大事な性質なので「一値ジャバラ性」というようにしましょう。

[660] 服部さん 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 13:07

帯領域ジャバラ法(または横分子ジャバラ法)は、従来のジャバラ系の折り方と帯領域等の考え方をミックスしたものなので、服部さんや、タトさんのように、従来のジャバラ法を知っておられる人にとっては、ジャバラ法の単なる焼き直しのような感じもされると思います。
っていうか、確かにそういう面も大きいのですが、帯領域ジャバラ法をわざわざ導入する意味は、帯領域とジャバラ法を結びつけることで、円領域分子法とかのノウハウをジャバラ系でも使えるようしたり、また、逆にジャバラ法の技法を円領域分子法で応用できるようにする、ということだと思っています。
後からまた、帯領域ジャバラ法についてカキコしますので、また読んでやってください。

[661] タトさん 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 13:25

ジャバラって何にも使われない領域が簡単につぶせるところが重要ですよね。

全く同感です。[654]の図では黄色く塗ったところですよね。
ここはこのまま風船の基本形としても折れますが(こういう折り方ができることも、これはこれで帯領域ジャバラ法の利点ではあるのですが、)やはりジャバラ法を使うからにはもっと軽快な感じで[654]の図の黄色い領域は処理したくなります。
この点がタトさんの言われる、「使われない領域が簡単につぶせるところ」だと思うのですが、この点を帯領域ジャバラ法では帯領域のうねりとして取り扱います。そしてこの帯領域を折るときの指標になるものとして一値ジャバラ性が使えると考えております。

帯領域ジャバラ法については、またアップいたしますので読んでいただければうれしいです。

[662] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(7) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 13:47

-----横分子図から実際に折ってみるための準備-----

[654]の横分子図を、実際に折ってみるためにはどうすればよいでしょうか。
例えば、円領域分子法ならば[654]の横分子図に対応するものは円図であって、その円図を実際に折りたたむためには接する円の中心同士を直線で結んで縦分子を発生させるわけですが、帯領域ジャバラ法では縦分子を発生させる必要はありません。設計の最初から最後まで横分子だけを考えているだけで、必要な操作はすべて遂行できます。ただ、誤解されないように付け加えさせていただきますと、「これは、あくまで横分子だけでも設計ができるというだけで、縦分子を排除しようとするものではありません。言うまでもないことですが、帯領域ジャバラ法であっても横分子とともに縦分子も考えていたほうが便利なことは多いです」という事情になっています。今回は説明を簡単にするために縦分子は使わず横分子だけを考えるようにしましょう。

[663] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(8) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 14:01

-----続 横分子図から実際に折ってみるための準備-----

帯領域ジャバラ法では、円領域分子法のように縦分子を発生させません。
では[654]の横分子図からどうやって折りたたみ可能な展開図を導けば良いのでしょう。って別になにもやる必要はありません。[654]の横分子図をそのまま折ってください。これでOKです。[654]の図の黄色く塗った正方形領域はとりあえず風船の基本形としておいてください(後で改良します)。

いきなり[654]の横分子図をそのまま折ることは慣れればとても簡単なのですが、ジャバラ法になじみのない方は戸惑われるかもしれないので、ヒントを書いておきます。[654]の横分子図中の赤線は横分子(正方形領域と帯領域)の境界線ですが、この全部の赤線が一値ジャバラ性を持つように折ってください。なぜなら各横分子同士は境界線が互いに一値ジャバラ性をもつ共通の形態を持つということで、接続が可能になっているからです。

[664] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(9) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 14:28

-----横分子図を改良する技法-----
[663]までで、帯領域ジャバラ法の基本的な流れを最初から最後まで見たわけですが、さらに帯領域ジャバラ法にはいろいろ便利なテクニックがありますので、それらについて見てみます。

まずは、横分子図を改良する技法です。
[654]の横分子図はそのままでも折りたたみ可能なのですが、ちょっと不満があります。
それはなぜかというと、[654]では図中の黄色で塗った領域を風船の基本形として折っているのですが、これはちょっと折りにくくて、せっかくのジャバラ法の利点というか面白さを生かしていないように感じられるからです。

そこで帯領域のうねりで、この黄色で塗った領域を処理してしてみます。

[665] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(10) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 14:43

-----続 横分子図を改良する技法-----

[664]の図で示したように、帯領域ジャバラ法では帯領域のうねりによって用紙内部の未使用領域を処理できるのですが、このようなうねりによって帯領域の形が変化したとしても、常に境界線は一値ジャバラ性を持つということに注意してください。
帯領域のうねりにはさまざまなパターンがありますので、その例を順次見ていきたいと思います。

[666] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(11) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 14:48

-----続続 横分子図を改良する技法-----
こんなパターンも可能です。

[667] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(12) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 15:07

-----続続続 横分子図を改良する技法-----

今度は左下のカドの大きさ3の正方形領域を、便宜上カドの大きさ2の正方形領域と幅1の帯領域とみなしてから、[654]の図の黄色い領域を処理してみます。

[668] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(13) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 15:24

-----続続続続 横分子図を改良する技法-----

こんなパターンもまた可能です。
この他にもいろいろなパターンが可能ですから、興味のある方は考えてみてください。

[670] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(14) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 17:20

-----実際に折ったときの各部分の厚み(紙の重なりの程度)を予測する技法-----

帯領域ジャバラ法では展開図から、実際に折られた基本形の各部の紙の厚さを予測することが容易にできます(この技法は円領域分子法でも可能なのですが、帯領域ジャバラ法の方が、用紙が方眼用紙のようにデジタル的に分割されているので、より効果的に使えるようです)。

では、実際にここの図の右上の展開図(横分子図)から図の左側の基本枝構造を持つ基本形を折ったときの各部の紙の厚さを求めてみます。

まず、左側の基本枝構造の各部にa1,a2,a3,,,d2'というふうに名前をつけておきます。

次に右上の横分子図に補助線を加えて、右下の横分子図のように横分子図のすべての部分が帯領域とみなせるように分解して、各帯領域に対応する基本枝構造上に部分の名前をつけます。

[671] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(15) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 17:56

-----続 実際に折ったときの各部分の厚みを予測する技法-----

[670]のように基本枝構造に名前をつけておきますと、この基本枝構造が実際に折られたときの各部分の紙の厚さは、対応する帯領域に含まれるマス目の個数に比例しますから(厳密には折り方で少しずれますがそれは無視しときます)、ここの図の右の横分子図に数字で示したように、各帯領域のマス目をそれぞれ数えておきます。
それから、各帯領域に対応する、ここの図の左の基本枝構造の各部分に同じ数字を書き込みます。

これで、基本枝構造の各部の厚さを予測することができました。

[672] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(16) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/07(Sat) 18:14

今回の帯領域ジャバラ法の大まかな説明は今までカキコしたとおりです。
まだその他の技法とかもありますの興味のある方は是非いろいろ試していただきたいと思います。
自分としましては、帯領域ジャバラ法を使って3Dの木とか折ってみたいと思ってます。

[675] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(17) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/08(Sun) 11:11

-----補足です(1)------

正方形領域などのジャバラ系横分子を組み合わせて横分子図を作るわけですが、そのときに各横分子の境界線上に等高数というものを定義すると便利です(というかほぼ必須で定義する必要があります)。
その等高数をつける方法をここの図に示します。

[676] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(18) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/08(Sun) 11:15

-----補足です(2)------

ジャバラ系横分子に等高数を定義した例をここの図に示します。

[677] ジャバラ横分子の話 投稿者:タト 投稿日:2002/09/08(Sun) 21:20

等高数をあわせるには設計用のグリッドの二倍(以上)のグリッドで山谷に折っていけばいいですよね。
この等高数が3種類以上ある場合も考えると角の出る位置を横にずらす技なども取り込めるかもしれませんね(急に難しくなりそうですが

[678] タト さん 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/09(Mon) 00:53

>この等高数が3種類以上ある場合も考えると角の出る位置を横にずらす技なども取り込めるかもしれませんね(急に難しくなりそうですが)

おっしゃるとおりで、等高数を定義した理由はカドの出る位置を横にずらすような構造に対応するためということが大きいです。

もしもカドの出る位置が横にずれないようなジャバラ構造だけを対象にするならば等高数をわざわざ定義しなくても、「隣り合う横分子の一値ジャバラ性の山谷を合わせる」というだけで話が済むのですが、これだと角の出る位置が横にずれている作品に対応できなくなるため、「隣り合う横分子の等高数を合わせる」としてカドの出る位置が横にずれるような作品にも適用範囲を拡張させております。

  カドの出る位置が横にずれるということに関しましては、タトさんのクワガタの大顎部分と足のカドでの横ずれを大いに参考にさせていただきました。
その際の横分子図を折紙分類のページに追加させていただきました。不都合等ございませんでしょうか。よろしくチェックのほどお願いいたします。
http://www43.tok2.com/home/meguro/sousakuka/tato/kuwa/kuwa.htm#p1

[680] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(19) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/09(Mon) 04:19

ジャバラ系展開図の構造を明確にするためには、うねりのある帯領域を適当な色で塗りつぶしてみるのがかなり有効みたいです。
そうすると、正方形領域とかがあぶり出しのように浮かび上がってきます。

[684] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(20) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/09(Mon) 22:55

簡単な設計例です。(この作例は等高数が3つあります)

[685] ジャバラ系折線構成のための折紙設計システム(21) 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/09(Mon) 22:57

[684] の横分子図を折るとムシの基本形になります(足が離れて折り出される)

[687] S太郎さん 投稿者:めぐろ 投稿日:2002/09/10(Tue) 21:58

帯分子ジャバラ法は先週の金曜日に思いついて(以前からぼんやりとしたイメージはあったのですが、肝心の横分子の一値ジャバラ性の活用ということが意識から抜けていました)、現在、使い勝手などを調べているところですが、もともとジャバラ法自体がとても有力な創作方法であるだけに、帯分子ジャバラ法も極めて有望な設計方法であるようです。
設計にかかる手間も円領域分子法よりは少ないようです。

帯分子ジャバラ法は、横分子の組み合わせだけで設計が完了できて、その横分子図がそのまま直ちに折り畳み出来るというのが利点だと思います。

横分子は、創作したいもののパーツ(頭とか手とか足とか)と直接対応するものですから、それから考えると、横分子を組み合わせるという操作は創作したいもののパーツを直接組み合わせているということになっていて、大変意味がわかりやすいと感じます。
また追加事項等をアップしますので是非読んでやってください。


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