ロシアンブルーなど、細身なタイプの猫のイメージです。座ったポーズは当初から狙っていました。
この作品ができるまで、猫というテーマは「折ってみたいリスト」の上位にありながらも、なかなか思うように折ることができないものでした。猫のしなやかな体つきは、直線主体の折り紙造形で写し取るのが難しく、立体的な「顔」も難問です。創作する際には、折り紙で作った時のイメージが漠然とではあっても必要になるのですが、それがなかなか掴めずにいました。
作り始める部位(頭、前脚など)を変えてみたり、「背割れ/腹割れ」、カド配置。思いつく限りのことを試してみないと展望が開けません。最初の扉がどこにあるか分からないとこうも作れないのかと、随分苦しい思いをしました。
当然、色々な作家の手による猫も参考にさせていただきました。中でもグーベルジャンさんの猫を見た時にはレリーフ作品ながらそのプロポーションに感動して、やはり22.5度だけじゃ猫は表現できないのか‥‥とちょっと絶望、なんてこともありました。
しかし今までの路線から大きく外れたことはやりたくありません。それで15度系に挑戦したわけです。少なくとも22.5度よりも細身な感じが出しやすいだろう、という狙いがありました。そう言えば『折紙探偵団コンベンション折り図集』に載っていたブリルさんの猫も60度系でまとめられていたし、もはや道はそこにしかない!と一念発起して取り組んだのですが、その壁はあまりにも高いものでした。
折り線の交点がどこにできるのか全く予測が付かないことにまず驚きました。当然、紙がどう動くのかがさっぱり先が読めないわけです。このときは、自分がいかに限定された経験に頼って創作をしていたかということを思い知らされましたね。これはかなりショックでした。結局一値性にすがる形でひとつ作例を作ったものの、こりゃあダメかもと正直思いました(笑)。
挙げ句の果てに私が辿り着いたのは、やっぱりいつもどおり作るしかないだろうという結論でした。なお15度へのリベンジは、3年後の「キリン」で果たされることになります。
完成へいたるきっかけは、ある日試作の山を見返しているときに手に取った猫の頭だけを折った断片で、それは、完成した猫とは逆に「背割れ」状態でしたが、頭・耳の基本配置は同じものでした。お、これはなかなかいいものを見つけた、と腹割れに変えてみてさらに前足を折り出してみると、うまいこと鶴の基本形の配置でピッタリはまったのです。ここまで来れば、後は後足を出すための仕込みを入れて完成です。
一見うまくいかなかった試作でも、ちゃんと取っておくと時には実になることもあるという話でした。