カワセミ / Kingfisher

2003/1/21公開

カワセミ

カワセミ

カワセミ

作品情報

解説

 1998年に改良を加えたためこの位置にありますが、原型を作ったのは「狐」よりも早い時期です。

 1993年といえばあの『季刊をる』が創刊された年で、私も創刊号から購読し始めたのですが、その内容は一高校生に「世の中やっぱり広かった」と思わせるものでした。それまで、笠原邦彦さんの「ビバ!おりがみシリーズ」くらいでしかコンプレックス系折り紙の情報を持たなかった私は、初めて見るロバート・ラングさん、吉野一生さん、川畑文昭さんらの作品群にただただ圧倒され興奮しました。

 『をる』創刊号の中でも、吉野さんの「ウルトラ具象鶴」に釘付けになりました。創作の過程がいくつかの試作とともに紹介されていて、だんだんと精巧な鶴ができあがっていくさまを見て大ショック。「どう折っていったらあんな風に折れるのだろう」と、本当に魔法のように感じられたものです。それでも何とかしてこんな折り紙を手にしてみたいという一心で、「基本形」のにらみ折りを試みました。

 結局、吉野さんの鶴には(当然ながら)辿り着けなかったのですが、ひょんな拍子に鶴とは違う“鳥の翼”が現れて、そこからこの「カワセミ」が生まれることになったのです。調子のいいことに、吉野鶴のことは忘れてカワセミ作りに没頭しました。

 その蛇腹を扇状にひろげて翼に見せるという技法、今にしてみればあまりに単純すぎてなんとも言えませんが、創作時の私にはたったそれだけで数カ月も紙をいじれるほどのアイデア(見立て)だったんですね。『をる』で新しい折り紙の世界に出会ったことによる高揚感があったのだと思います。少しでも全体のバランスを良くしようと、蛇腹の仕込みの比率や数を変えたりして、ホントにいくつも折りました。

 98年の改良についてですが、これも『をる』誌上で中野獨王亭さんが「鳥のポイントは足の出る位置だ」と仰っていたことに「なるほどそうか」と思い、無駄に指を生やしていたのをやめつつ、足の位置が前に寄り過ぎていた部分をメインに修正しました。他にも細部をいろいろといじっています。

 最後に、発表した折り図のことでひとつ。最初の折り筋をつける工程は失敗でした。これは外側の線を先につけてそれを8等分していく方がいいようですね。どうもすみません。